第11回 全国首長連携交流会報告(概要)

写真:2日目全体交流会で報告する各分科会の座長
第11回全国首長連携交流会連携交流会 報告(概要)
 平成18年5月12日から14日かけて、東京都港区の政策研究大学大学院大学にて、第11回全国首長連携交流会が開催されました。今回は、合併で市町村の数が激減するなか、昨年とほぼ同数の51名の首長本人の参加をはじめとして、200名以上の参加を得て、白熱した議論や、和やかな交流をすることができました。
 初日の全体交流会においては、政策研究大学院大学の吉村学長からご挨拶を賜ったほか、「分権改革の方向を巡って―ポスト合併・プレ道州制時代の自治体改革を考える―」と題したパネルディスカッションを行いました。こちらは、前志木市長で地方自立政策研究所の穂坂理事長がコーディネーターとなり、逢坂議員、泉田知事、森民夫市長、清水市長、横道教授の5名のパネリストから現場をきちんと「踏まえた分権改革を巡って、議論が白熱しました。また、初日には医療・福祉関係の話題提供もありました。
 また、懇親会には、中馬 弘毅 氏(内閣府特命担当大臣(規制改革)行政改革担当 構造改革特区・地域再生担当)、佐藤 信秋 氏(国土交通省事務次官)にもご参加・ご挨拶を頂くなか、各地からの特産品がお土産として陳列され、参加者の皆様に試食・試飲をして頂きました。
 二日目は、教育、特区制度、防災についての話題提供の後に、分権改革、行財政改革、教育、医療、農業の5つの部会と市町村職員と中央省庁の交流をメインにした特別部会の合計6つの部会を開催しました。
 午後の全体交流会では、各部会からの報告に加えて、「分権社会における行政の行方―道州制・新しい国土計画と国と地方の役割―」と題したパネルディスカッションを開催しました。こちらは、国民生活センター理事長の糠谷真平氏をコーディネーターに、土屋 正忠 氏(衆議院議員/前武蔵野市長)増田 寛也 氏(岩手県知事)、辻原 俊博 氏(国土交通省官房審議官(国土計画))の3名がパネリストとして登壇し、初日に引き続いて分権改革を中心に、新しい国土計画も見据えた議論を行いました。
 2日目の懇親会には、福田富一 栃木県知事にご挨拶を頂いたほうか、世界的なシンガーソングライターのヤドランカ・ストヤコビッチさんにもご参加いただき、平和への願いを込めたお話し頂いた後に、数曲歌って頂きました。
 最終日には、日本橋川においてEボート体験乗船を行った後に、東京の「川の駅」候補地の視察、お台場パナソニックセンターでの最新技術の体験・NTTドコモの提案する新時代の通信の話題提供等を行いました。

第11回全国首長連携交流会 大会宣言  

 現在、わが国の地方自治制度は大きな転機を迎えている。「平成の大合併」「三位一体改革(地方財政自立改革)」等が進み、さらに、最近では道州制を巡る議論も活発である。地方自治体、そして、国と地方の関係が、分権社会に向けて大きく変化している。
 しかし、こうした制度変更や議論が、現場の実状に即しているとは言い難い。もちろん、地方六団体等の地方自治の立場からの発言もある。ただし、多くの場合、最大公約数的なものとならざるを得ない。深刻だが地域性が強い意見、先進的であっても様々な事情によりコンセンサスを得られない意見などは、容易には発信できないのである。
 我々、全国首長連携交流会に集う首長は「豊かな分権社会」を創り出したいという志を共有し、毎年1度、2泊3日で交流と議論を行っている。また、本会を母体にして生まれた「提言・実践首長会」とともに、様々な提言をしてきた。
 今回、第11回全国首長連携交流会に参加した51名の首長も「豊かな分権社会」の実現に向けて、「現場にこそ真実がある」という認識の下、パネルディスカッションや六つの分科会で真摯かつ自由闊達に討議を行った。その結果、当面する多くの課題を解決するためには、地域力を高めることがいかに重要であるかを痛感した。また、二期目の地方財政自立改革(三位一体改革)においては、国と地方の税財源の配分比率を、業務の実態に合わせて6(国):4(地方)から4(国):6(地方)に変更し、それに伴う権限も移譲することが望ましいとの結論に達した。
 以下に、各会合の成果をまとめ、広く関係者にアピールするものである。第1分科会 分権制度分科会
・ 日本社会は、今後の急激な人口減少を前にして、諸外国に前例なき全く新しい社会モデルを構築する必要に迫られている。我々は「豊かな分権社会」こそ、構築されるべき新しい社会モデルであり、この流れを止めることはできないと認識している。ゆえに、現在中央に在る財源・権限のうち自治体で担うべきものは、全て自治体に移譲するべきである。我々は、自己責任と自己決定のなかで失敗を恐れず、豊かな分権社会を構築する覚悟である。
・ 対症療法ではなく、望ましい国のかたちを提示し、それに基づく役割分担を考えることを提案する。例えば、山林・河川・水源地等の管理について、分権の流れに応じて自治体に任せる傾向がある。しかし、「国土保全は国の仕事」という出発点から考えると、国の支援が不可欠になる。豊かな分権社会の構築のためにも、しっかりとしたビジョンに基づいた役割分担が必要だ。
・ 都道府県は、国の制度について硬直的に解釈し、市町村を指導する傾向にある。我々は、実態に合わせた制度の柔軟な運用のためにも、中二階の仕事を無くしていくことを求める。また、災害支援など市町村をまたぐ支援については、広域的な支援の仕組を独自に構築することを求める。第2分科会 行財政改革分科会
・ これからの行財政改革の行方を示すためにも、合併しない自治体の努力と成果、合併した自治体の合併効果をしっかりと検証し、その情報をお互いに共有する場を設けるべきである。
・ 我々は、各自治体で実施している個別の事業に対しても事業評価をすべく努力し、その費用対効果を判断しながら、行財政運営の効率を高める所存である。
・ 行財政改革においては、住民への情報公開が決定的に重要である。住民こそ地域の主人公であるとの意識を持ってもらうとともに、現場を出発点にした住民、市町村、都道府県、国の新たな関係を築くべきである。
・ 役場(役所)が元気になれば地域が元気になる。役場(役所)の元気の素は元気な職員にある。そのために、ノウハウの継承と人材育成に努める。

第3分科会 教育改革分科会
・ 子どもの学力低下の問題は、学校、家庭、地域の関連性の中で生じている問題であり、総力戦で取り組む必要がある。
・ 教育委員会制度の運用については、学校教育と生涯学習とに対応すべく、行政の責任者たる市町村長の選択権を認めるべきである。
・ 市町村長は教育のあるべき姿を示し、リーダーシップを発揮して、自らの教育哲学に基づいて教育改革を実践する。首長に期待される役割は、教育現場を元気にすることである。現場の教師が元気かどうかに目配せをし、教師は輝く存在でありなさいというメッセージを伝えていく。

第4分科会 医療・福祉分科会
・ 少子化問題は単に人口が減少するということが問題ではなく、地域の環境問題・過疎問題・高齢化の問題にも関わる総合的な問題である。だからこそ、子育て支援政策に本気で取り組むことが重要である。
・ 国には、長期的な視点で法律制度に関わるような課題を解決する役割がある。たとえば雇用形態に伴う所得格差の是正等雇用環境の整備、相続の問題などがあるが、少子化対策という観点から、子供を生みやすい制度設計を行うことを求める。
・ 我々市町村は、現場を預かる立場として、地域の特性・実情を踏まえた子育て支援施策を実施し、地域の育児力を強化する所存である。また、子育て支援は持続可能であることが条件であり、そのためにも共助を中心とした地域ぐるみの対策を展開すべきである。我々は、例えば、地域の男女が交流する機会を整備したり、育児経験者などのボランティアを含めて、地域の子育てを循環する取り組みなどを実践する保存である。
・ 子育て対策の決め手はない。各々アイデアを実践し検証する自治体が連携して、効果的な支援の仕方を模索するべきである。

第5分科会 地場産業・地域おこし分科会
・ 「山河やぶれて国はなし」。我々は、農山村の過疎や廃村の危機的な状況では、豊かな国づくりは出来ないということを共通認識として持つ。現場を持つ我々市町村は、住民と共に限られた財源の中で農山村の保全と活性化に積極的に取り組んでいる。しかし、現場から離れた国や都道府県では、必ずしも市町村ほどの積極性があるとは限らない。我々市町村は、このような問題を国や都道府県にアピールし続ける所存である。また、国や都道府県は、我々現場の声を踏まえた具体的な提案を行うべきであると考える。
・ 各々の地域において受け皿となる生産法人の大規模化を図る一方で、地域と地域を結ぶ広域的かつ大規模なネットワークをつくる必要がある。また、ハローワーク等が積極的に農山村部に若い就農者を送り込むような支援が必要であると考える。我々は、水源の里が寂れて行くことは日本全体の問題と認識し、あらゆる手段を講じて農山村を守る所存である。

第6分科会 特別分科会
・ 「豊かな分権社会」の実現のヒントは、現場にある。我々は、現場にこそ真実があると考える。しかし、残念ながら立場が変わると物事の捉え方が変わる。現在、国と地方では、物事の捉え方が異なり、共通のビジョンが描けていない。今こそ、国と地方が対等の立場でコミュニケーションをし続けることが重要である。
・ 上述の認識のもと、次の世代の国と地域を担う、中央官庁の若手職員・若手首長・地方公共団体の担当者レベルでの交流の場を設定した。我々は、こうした場を継続的に開催することによって、双方にメリットのあるシステムが構築できると考える。ゆえに、このような次世代交流会を継続的に実施していく所存である。これからは、複眼的な思考のできる「新型の首長」が必要である。


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