第10回 全国首長連携交流会報告

写真:初日の全体交流会の様子
第10回全国首長連携交流会連携交流会 報告(概要)
 平成17年5月20日から22日にかけて、愛知県長久手町におきまして、下記のとおり第10回全国首長連携交流会を開催しました。当日は、首長本人53名の参加をはじめとして、全体で170名以上の参加を得て、交流と活発な意見交換が行われました。
初日に長久手町「文化の家」で開催された全体交流会では、増田寛也 岩手県知事からローカルマニフェストと自治体経営についてご講演頂くとともに、トヨタ自動車の瀧本専務取締役より同社の環境に配慮した新技術開発へ向けた想いと取組みをご講演頂きました。夜には、名古屋市内の「栄マルベリーホテル」で交流・懇親会を開催しました。森德夫 愛知県副知事にもご挨拶頂いた後に、昨年度の全国首長連携交流会開催自治体である栃木県宇都宮市の佐藤栄一市長に乾杯の発声をして頂きました。また、参加者のお土産を展示した後に試食・試飲をして頂きました。参加者の多くに、壇上にてご挨拶を頂くなど、こちらも盛会なものとなりました。
二日目は、午前中に町内の「文化の家」「福祉の家」で、行革、合併、教育、医療・福祉、農業・農村、環境の6つのテーマで部会を開催しました。いずれも、熱心な議論が行われ、1年に1度だけではなく、継続的に議論をする必要と実践が重要である点が確認されました。
午後の全体交流会は、愛・地球博 長久手会場内の「ロータリーホール」で開催されました。ここでは、各部会からの報告に加えて、モバイル社会研究所の山川隆 副所長の「モバイル化と地域社会の関係について」の講演がありました。続いて総括討論を行い、長久手宣言(以下に掲載)を採択しました。その後、約4時間ほど万博会場(長久手会場)内の視察を行い、夜は「ロータリーホール」で、交流・懇談会を開催しました。メンバー全員の集合写真を撮影したり、終始和やかな雰囲気での会合となりました。
最終日には、愛・地球博のなかでも環境や市民参加をメインテーマにした瀬戸会場の見学を実施しました。
第10回全国首長連携交流会 長久手宣言
「地方自治の現場を担う有志市町村長の交流と連携こそが、新しい日本をつくる」という共通意識で理念のもと、始まった「全国首長連携交流会」も今年で10回目を迎えた。
この記念すべき連携交流会は、21世紀に入って初めての万国博覧会「愛・地球博」が開催されている愛知県長久手町を会場に選んだ。博覧会の基本テーマは縦糸が「自然の叡智」、横糸が「豊かな交流」であり、地方自治のあり方を論じ合う絶好の機会となった。
参加した53名の市町村長は、国、民間企業関係者も交えて、これからの地域づくり、国づくりについて真摯に議論した。
その成果を「長久手宣言」としてまとめ、広く関係者にアピールする。

1.持続可能な社会の実現を目指した新たな制度設計
万博のテーマが示すように、地球環境時代の21世紀の人類にとって、地球上総ての「いのち」の持続可能な共生を、全地球的視野で追求することが、最も大きな課題として浮かび上がってきた。
また「平成の大合併」は、概ね一段落であるが、実体的には胸突き八丁を迎えつつある。各地で合併新自治体が誕生するとともに、小規模ながら合併しないという選択をした自治体も多数ある。この中で合併の有無にかかわらず地域の格差はむしろ拡大し、いわばまだら模様の現象も見られる。この問題点を解消し、財政的にも、環境や資源エネルギーの面でも持続可能な地域社会を形成するためには、地方自治体が市民と協働して、地域の実態を踏まえた地域経営を主体的に行うことを可能にする新たな制度設計を追及する。

2.県、市町村連携による、あるべき分権国家の追及
市町村の合併が進み、大規模な基礎自治体の数も増えてきたこともあって、国、県、市町村の役割は大きく変化してきている。三位一体の議論にあたっても、短期的な財政視野ではなく、地球環境時代にふさわしい、新しい国家、地方分権の姿を考える視点を基本とすべきである。
今後、道州制も視野に入れながら、市町村と県の健全な関係の構築を目指して、市町村長および知事の忌憚のない意見交換の場を設け、あるべき分権国家の姿を追及していく事を確認する。

3.開かれた自治の確立と市民、企業の協働の推進
経済面、環境面等からの一層の制約の進化が予想される中、最近のわが国企業の環境、省資源・省エネルギーへの取り組みは目覚しいものがある。また、市民もNGO活動やNPO活動など、国際的にも評価されるような新しいスタイルでの社会活動を展開し始めている。
豊かで持続可能な地域を形成するための新しい社会システムを実現するプロセスとして、地方自治体の首長と市民、企業を始め多様な主体の参加による意見交換の場を設け、行政、市民、企業等が協働して、地域からの取り組みを積み上げていく事を確認する。

4.成熟した民主主義の実践としての地方選挙のあり方の研究と実践
地域住民が地域のあり方を選択し、選択結果に自らも責任を持てるようにするためには、民主主義の基本的手段たる地方選挙において、首長や政党が提案する地域政策が具体的に提示し、その政策がどの程度実施されたかなど投票に際しての判断基準を示し、地域住民が選挙を通して地域のあり方を自ら選択できるようにならなければならない。
我々は、この手段の一つである「ローカル・マニフェスト」などを研究し、地域住民が自己責任と自己決定をできるような、いわば新しい政治・行政の創造を目指す事を確認する。

5.合併に関わる自治体支援体制の構築
合併した、しないに関わらず、今こそ首長の強力なリーダーシップが求められる。現状において、合併についての判断材料は少なく、意思決定が大変難しいという状況にある。全国の取り組み事例をまとめ、紹介する「ベストプラクティス」や合併を検討する市町村に対するカウンセリング制度など、自治体の支援体制を構築すると共に、次回に向けての調査・研究体制を構築することを確認する。

6.首長からの教育改革の提言と実践
基礎自治体の長である市町村長は、学校現場においても、最終責任者であるという認識のもと、提言・実践首長会等において、現在急ピッチで審議が進められている中教審の議論に平行して、現場からの教育改革をまとめ、文部科学省に提出することを確認する。

7.国際視野での地方自治体の連携活動の研究と実践
今や環境問題は地球レベルの問題であり、地域社会の経営も国際的視野での課題を共有せざるを得ない時代になった。この度、私たちは世界120ヶ国が参加する長久手町の万博会場において、この会議を持った事をふまえ、地方からの国際交流、国際貢献のあり方についても研究し、取り組んでいく事を確認する。


長久手宣言 PDF版(21KB)

第10回全国首長連携交流会 報告書 PDF版(2,216K)